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 齊木魯烏(チム・ルウ)さんの日記「「メフィスト・フェレス」の 『問ひ』」
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◆101才 1909(昭和-16)年7月24日(獅子座) A型 広島市近辺在住 アジア(海外)勤務 広島市近辺出身 専門職 文系大学卒 年収 900万円以上 不定期休み 一人暮らし 独身 ◆離婚×2 ◆子供3人 車有り お酒を飲める ◆/細身体型 / グレー髪 白目 黒肌 ギャンブルしない
◆趣味・興味: 映画/ビデオ, 酒/ワイン, 博物館, 美術館, 猫系
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■□■…中国新彊ウイグル自治区の区都■【ウルムチ】は漢字表記で【烏魯木齊】と・書きます。 ■且つてのシルクロードの中心地□■しかし・今は、 、 。
 
2010年9月
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「メフィスト・フェレス」の 『問ひ』
 或日、ふたりの恋人の前に悪魔が現われて、問ひました。

『美味な食事・
 耽美な性愛・
 深く快い睡眠・
 心通じ合う異性・


 その四つの内、
 ひとつだけを叶えて、やろぅ…

 ただし、他の三つは人並み以下になる、それでも・良ければーーー。』

恋人たちは、迷う事なく答ます。

『心、通じ合う存在・です!』

悪魔は、気味悪くほくそ笑むで、こぅ言います。
『他の三つは、人並み以下になるのだぞ!
それでもイイんだな。』
恋人たちは、深く頷きます。

すると悪魔は、黒い毛だらけの手で二人の頭を撫でて、こぅ言います。

『これでオマエ達は、心通じ合う存在・と、なった。どうだ、感じるか?お互いの存在を。』

二人は、顔を見合わせて答えます。

『いいえ、さっきと・まるで同じです。
こんなにそばにいて、互いに見つめ合えるのですから…。』

悪魔は意地悪く言います。
『それでは、二人を遠く引き離してやろぅ!』

その言葉が、ふたりの耳に届くや否や、強いつむじ風が播き上がって、ふたりは地の果てに飛ばされてしまいます。


そこでふたりは、
満足に食べる事も、寝る事も、まして愛し合う事も出来なくなってしまうのです。

                                                               【その2】に続く


地の果ての、北と南に引き裂かれてしまった・ふたりは、
それでも互いの存在を感じ合うことが出来ました。
食べることも、眠ることもままならず、ふたりはいつも空腹で、
その上相手に触れることも、見つめ合うことすら出来ず、ただ
相手に逢う為だけに、歩き続けました。

凍える寒さと、極度の飢えと、激しい睡魔に耐えかねて、
彼女はとうとう、倒れて・しまいます。
悪魔は彼女の耳元で、囁きました。

「死すべき・哀れな存在よ。
もうじき、オマエの命は、花のように萎れて枯れてしまう。
その前にもう・ひとつだけ、オマエの願いを叶えてやろう。
残る三つの内から、ひとつ・だけ、選ぶがいい。
ただし、その・ひとつを選んだが最後、オマエは他のふたつを、
永遠に封印されてしまう。
それでも、良ければ・ひとつを、選ぶがいい。」


彼女はもう、くたくたで、たった・ひとつのことしか、考えられませんでした。

「それなら、私に・深い眠り・を、下さい。
そしたら私は、夢の中で永遠に彼を、感じて・いられるから。」

「もし、それを選べば・オマエは二度と、食べることも、
愛し合うことも出来ぬ。それでも、かまわぬのか?」

「彼に、会えさえすれば、私は石のようになったってかまいません。」

「それなら、オマエの望みを叶えてやろう。」

悪魔は、毛むくじゃらの右手の人差し指の・真っ赤な・細い針のような爪で、
彼女の額を、ズブリと刺しました。
みるみる彼女は、乳白色の大理石に変わりました。
ただ、その石は、生暖かく、微かに寝息をたてていました。
彼女は、深い眠りに墜ちたのです。
その眠りの中で、彼女は夢を見ていました。

そこは、彼女が生まれる前に暮らしていた村でした。
森と湖のほとりの穏やか村でした。
ふたりがまだ、今の「名」で呼び合う前の「名」で、呼び合って・いました。
今とは違う姿をしたふたりは、それでも互いを感じ合い、とても幸せでした。

石となった彼女は、かすかに・微笑んで・いました。


                  【その3】に続く。


満足に寝ることも出来ず、何日も何日も、飲まず食わずで歩き続けた彼は、
灼熱の太陽に焦がされて、とうとう倒れてしまいました。
悪魔は、彼の耳元で囁きました。

「死すべき哀れな存在よ。
もうじき、お前は虫けらのうに、干涸らびて死に絶える。
その前にもう・ひとつだけ、お前の願いを叶えてやろう。
残る三つの内から、ひとつ・だけ、選ぶがいい。
ただし、その・ひとつを選んだが最後、お前は他のふたつを、
永遠に封印されてしまう。
それでも、良ければ・ひとつを、選ぶがいい。」

彼は、燃えさかる情念の中で、たったひとつのこたしか、
考えられませんでした。
彼は最後の力を振り絞って、答えました。

「それなら、愛する歓び・を下さい。
他のふたつは、どうなったってかまわない。」

「もし、それを選べば、お前は二度と、食べることも、眠ることも出来ぬ。
それでも、かまわぬのか?」

「彼女と触れ合って、愛し合うことが出来るなら、
私は熱い風になったって、かまわない。」

「それなら、お前の願いを叶えてやろう。」

悪魔は、毛むくじゃらの左手の人差し指の、真っ青な鋭いナイフの様な爪で、
彼の胸を、ズブリと刺し貫きました。
みるみる彼の体は、砂となり、熱い熱い砂塵となりました。
砂塵は旋風となり、あっという間に、彼女の横たわる北の大地に飛んでゆきました。
そこで、横たわる大理石の彼女の体を、熱い熱い風となった彼は、愛撫し続けました。
彼のザラザラした砂粒の体が、暖かい乳白色の彼女のすべすべした大理石の肌に触れて、砕け散りました。
その度に、砂の風となった彼のこころに閃光が走り、歓びが脳天を貫きました。

でも、石の彼女は、深くスヤスヤと眠ったままで、何の反応も示しませんでした。


                                                              【その4】に続く。



こうして、何万年が過ぎ去りました。
風の彼は、大理石の彼女を愛撫し続け、もはや彼女は元の姿を留めぬ、
たおやかな丸みを帯びた岩となって・いました。

さらに、何世紀、何十世紀が過ぎ去り、とうとう、彼の熱風によって
彼女の大理石が砕ける日が、来ました。
岩の彼女は、真っ二つに砕け、初めて彼は彼女の中に入ってゆきました。

さらに、何万年、何十万年が過ぎ去り、とうとう岩は跡形もなく消え失せ、
小さな小さな砂粒となって、彼と混ざり合いました。

二人の感性は、互いの存在を感じ、歓びに震えあって、天高く舞い上がりました。
そのままで、散り散りになる前に、二人のことを、何十万年も見守っていた神様は、
自ら黄金の雨となって降り注ぎました。
ふたりは、降り注ぐ黄金の雨に解け合って、大地に帰ってゆきました。
森を抜け、河を走り、湖の底に静かに沈殿し、降り積もって堆積し、
ふたりは、ひとかたまりの、黄金色に染まった乳白色の岩に、なりました。




森と湖にそばの穏やかな村で、ひとりの老人が、孫たちを集めて、お話を聞かせていました。

「こうして、風と大理石になったふたりの恋人のお話は、おしまいじゃ。」

「ふたりは今、どこでどうしているの?」
孫のひとりが尋ねました。

「この村の、あの湖の底に、今でも、横たわっておる。
氷が溶けたよく晴れた春の日に、年に一度だけ、湖の底に光るふたりの岩を、見ることが出来る。
黄金の乳白色に煌めく、その岩には、小さな赤い点と、蒼い点があって、
そこが、彼女の額と、彼の胸だと言われていてな・・・・・。
ワシも、湖に潜って、一度だけ触れたことが、ある。」

「それで、どう・なったの?」
おませな孫が、聞きました。

「それからすぐ、ワシはお前たちのおばあさんに、出会った。
ワシには、すぐに分かった。この人だ・とな。」

そして・・・・?」
孫達は一斉に聞き耳をそばだてました。

おじいさんは、いとも簡単げに答えました。

「勿論、悪魔のヤツは、ワシたちの前に現れ、同じ質問をしたさ。」

孫たちは歓声を上げ、叫びました。

「そ、それで、どうなったの!!」




                                                             【その5】に続く。


「或日のことじゃ、ワシ等の前に悪魔が現われて、訊いた。

『美味な食事・
 耽美な性愛・
 深く快い睡眠・
 心通じ合う異性・


 その四つの内、
 ひとつだけを叶えて、やろぅ…

 ただし、他の三つは人並み以下になる、それでも・良ければーーー。』
とな。

ワシは、おまえ達の「おばあさん」になる彼女の手を握りしめて言ってやった。

「『今、お前が上げた四つはどれもが、人間が幸せになる為には欠かせないものだ。
どのヒトツが欠けても幸せには、なれん!だが、程々がいい。
その内のヒトツだけに拘れば、たちまち他の三つがおろそかになって、不幸になってしまう。
だから、ヒトツだけを選ぶのは、愚かだ。もし、どうしても、ヒトツだけを選べと
お前が言い張るなら、ワタシには、そのどれもが不要だ。この人がいなくては、食べることも、眠ることも、愛し合う歓びも、こころ通じる異性も、全て意味がない。
彼女だけを残して、四つすべてをワタシから奪うといい!』   ・・・・・とな。」

「それで・どう、なったの?」

孫たちは、おそるそる訊きました。

「なに、悪魔は、聞いたこともない悲鳴を上げて、真っ黒な毛むくじゃらの塊になって、パッと燃え上がって、消えてしもうた。」

孫たちは、顔を見合わせました。

「すると、彼女は、つまりお前たちの・おばあさん・は、ワシを見上げて、
こう言ったんじゃ・・・・」

なんて?」

「 『あの時も、そう答えれば、良かったのね。』・・・・とな。    」

「どうゆう意味なの?」

「わからん。ばあさんは死ぬまで、その意味を教えてくれなかったんじゃ。」

そう言って、おじいさんは、亡くなった「おばあさん」の写真を見つめて
そっと、静かに・微笑み、、、ました。


湖の底では、
黄金の乳白色の岩が
おじいさんの自慢話を、
クスンとかすかな笑い声をたてて聞いて・いました。





                                       『メフィスト・フェレス』の【問い】・ 完

                     M・に、捧ぐ。

2010/7/26   20:40   海外にて

小説系日記

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